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第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ・レポート

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イスラエル館は、「停戦と人質解放の合意に達した時点で展覧会を開く予定だ」との張り紙をし閉館。

第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ・レポート
9月25日(水)午後5時から
入場料 1000円
会場:Art Lab Tokyo
定員先着10名
*聴講希望者はお手数ですが、info@artlab-tokyo.comまで事前申し込みをお願いいたします。

・アートラボ・トーキョー 〒107-0061 東京都港区北青山2-7-26 メゾン青山202 TEL:03-6231-6768

  • Art Lab Tokyo
  • 202 Maison Aoyama Bldg. 2-7-26 Kitaaoyama, Minato-ku, Tokyo, JAPAN 107-0061
  • tel:+81 (0)3-6231-6768

レポーター
森下泰輔(美術評論家/現代美術家)
菅間圭子(アーティスト)
 
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人権や平等、差別、移民にスポット
 
 イタリアで第60回ヴェネツィア・ビエンナーレが開催されている。「Foreigners Everywhere どこにでもいる外国人」がテーマだ。人権や平等を軸に過去から現在に至る「ポスト・コロニアル(脱植民地化)」に焦点を当てる。
 南米出身のビエンナーレ初のキュレーター、アドリアーノ・ペドロサ監修の国際展示部門は、パリ出身、コレクティブ(芸術集団)、クレール・フォンテーヌの作品《どこにでもいる外国人》から主題を引用。53の言語を用いた一連のネオン文字彫刻。この言葉自体は2000年代初頭トリノでの人種差別や外国人排斥と闘った集団の名称を採用している。
 国際展示部門は、人権や平等、差別、移民、離散者、亡命者、難民・漂流民問題が軸となった作家構成。しかも、そうした状況の当事者である作家240名以上を再考察の対象として展示。旧第三世界(アフリカ、中東、東南アジア、ラテンアメリカ、カリブ海)における20世紀からの旧後進国西洋美術受容史をあまたの作品によって埋め尽くした。「不服従のアーカイブ」(マルコ・スコティーニによるプロジェクト。2005年からLGBTQ、難民・移民、差別、ガザ侵攻までの抵抗の記録ビデオを複数展示)が興味深い。パブロ・デラーノによる米植民地のプエリトリコを博物館形式により告発する「植民地博物館」と題する展示も見逃せない。
 また、各大陸先住民アートに注視させる展示になっている。たとえば、アボリジニ女長老であるマレーネ・ギルソンのようなプリミティビズム、ナイーヴと呼ばれ西洋美術史から除外(差別)されてきた無垢な作品も多数評価対象にのぼる。
 国際展示部門最優秀賞はマオリ族女性アーティスト4人のマタアホ・コレクティブ。マオリの母系社会を象徴する繊維で織られた大規模な空間構成だ。
89ヵ国参加の「国別展示」だが、ここでも先住民の代表が多く、アメリカ館が歴代初のアメリカン・ネイティブの作家、ジェフリー・ギブソンの展示。
 国別展示最優秀賞オーストラリア館では、被差別アボリジニのアーティスト、アーチー・ムーアは、巨大黒板に拘束された植民地法時代の近親者から遠い先祖までの膨大な家系図を描いた。
 日本館の毛利悠子は、ヴェネツィアで探した家具や果物を使い、仏教「九相図」に「水」を結び付け、音を奏でる仕組みで地球環境維持を物語る。
 
 国別の参加では戦争の影を落とす。たとえば、ロシア館は前回に引き続き棄権、今回はボリビアにパビリオンを貸与。イスラエル館は、「停戦と人質解放の合意に達した時点で展覧会を開く予定だ」との張り紙をし閉館していた。
 
 
 

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