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「HIGH&LOW」リキテンスタイン オマージュ展 An Homage to Lichtenstein

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森下泰輔
Taisuke Morishita
《John Romita-Roy Lichtenstein》
2024
acrylic on canvas, acrylic,oil on canvas
each80×80㎝ 
a set of 2 works

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Keiko Kamma
左)《ヘアリボンの少女・ルミ》
2010―2025
キャンバスにアクリル、エナメル、ラメ、ラインストーン
910×910mm

右)《ヘアリボンの少女・エリ》
2011
キャンバスにアクリル、インク、ラメ
910×910mm


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薄井崇友 
Takatomo Usui
《Decommissioning work crane/請戸漁港、浪江・フクシマ》 
2025
素材:ゼラチンシルバープリント  
45.7×56cm  
限定数ED1/9 

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Roy Lichtenstein
《American Indian Theme IV》
1980
Woodcut and lithograph on Special Arjomari paper
エディション50

「HIGH&LOW」リキテンスタイン オマージュ展  An Homage to Lichtenstein

2025年6月4日(水)~18日(水)
月火(9日、10日、16日、17日)休廊
初日午後5時半より軽いオープニング
15:00~20:00  最終日~18:00
Art Lab Tokyo(青山)〒107-0061東京都港区北青山2-7-26 メゾン青山202
tel.03-6231-6768

森下泰輔
Keiko Kamma
薄井 崇友
ロイ・リキテンスタイン

1990年に旧MoMAで「HIGH&LOW」といった企画展を見た。
コマーシャルアートや漫画などのロウレベルから大文字の美術史、すなわちハイアートがどのように引用し、サブ文化を変調してきたかに言及した展示であった。
ここでリキテンスタインはオリジナルの漫画から初めてハイアート史そのものを漫画的文法で変調させてきたことをビフォー&アフタで展示し解説しており、POPアートがいかなる文脈上で登場したのかがわかりやすく解説されていた。
今回の展示の発想の基本にあるのは同展で受けた印象を再度制作といった形で分析・確認することであり、森下が25年にわたり展開している「クリティカルアート(批評性を内在した芸術)」に連なる作品群となっている。Kamma、薄井の作品もリキテンスタインにオマージュをささげている。

リキテンスタインは、60年代初頭、アメリカンコミックからの引用を繰り返しているが、分析してみると「引用」といった生易しい段階にはなく、ほとんど「借用」もしくは「盗用」しているのに等しい。リキテンはなにも漫画を描きたかったわけではなく、当時の資本主義的な画像を社会学的に援用することに重点があったわけで、できる限りそのままの図像をキャンバスに拡大することに主眼があった。

そのため21世紀になってからはオリジナルの漫画家の縁者より「盗作だ」との訴えが相次いでいる。Tony Abruzza、Ted Galindo、Mike Sekowsky、そして頻繁に拾ったのがJohn Romitaであった。これらを比較したアメリカの複数のサイトでは、「漫画家の方がずっと絵がうまい」との批判が噴出している。

だが、リキテンが行ったことというのは、漫画という社会学的画像のハイアートへの変換であって、モダンの要素、とりわけフェルナン・レジェの造形原理を漫画に導入しているように思う。また、リキテンは主に「赤・青・黄色」の絵具の三原色を基盤とするが、これも「モンドリアンを参照した」(リキテンスタイン)というモダン抽象のセオリーによっているのだ。

忘れてならないのは、今日の「おたくアート」ないし、漫画・アニメの芸術視への昇格の根本には1960年代のリキテン登場と漫画のハイアートへの変換が革命としてまずあり、半世紀遅れであらかじめリキテンが開拓した土壌上に漫画・アニメのアート化があるということであり、彼がなさなければ、続くグラフィティやシミュレーショニズム、スーパーフラットなどの後続概念の継続はなかったということであり、どのような意味においてもパイオニアであったのだ。

本展はそんなリキテンスタインをめぐる問題を分析的に表象する。

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