HOME > EXHIBITION > DETAIL

あおいうに 青の時代―Return to Painting―

イメージ画像

《海辺の母子像》
2026年作
F6号(410×318mm)
油彩、キャンバス

『あおいうに青の時代―Return to Painting―』あおいうに個展
2026年9月9日(水)~20日(日)
15:00~20:00 最終日~18:00まで
会期中14,15日月火曜日休廊

レセプション 9月12日17:00より会場
 
会場:Art Lab Tokyo
〒107-0061 東京都港区北青山2-7-26 メゾン青山202
 

あおいうに アーティスト・ステートメント
本展は青という色彩を通して現代社会を生きる私たちの痛み──不安、喪失、孤独、言葉になる前の感覚──を描き出す試みです。
 
あおいうには14年間にわたり、個人的な内面や心の傷、日常の違和感を起点に、信仰、抑圧、病、カルトといった社会構造を、寒色の絵画によって可視化してきました。
 
ピカソの「青の時代」が、貧困や社会の周縁に置かれた人々へのまなざしを含んでいたならば、令和の青は、日々の暮らしの中で静かに傷ついていく感情の色です。
 
副題《Return to Painting》には、あおいうに自身の絵画回帰と、絵画が再び社会と個人史を描くための言語として選び直されるという予感を込めました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「青い」うにの時代にむけて
前回、あおいうにのアートラボ・トーキョー/浅草で開催された個展で、一点の作品を目にした瞬間、その青のマチエールから私は即座にピカソの「青の時代」を想起した。その印象があまりにも鮮烈だったため、私はあおいうに氏に「一度、ピカソの『青の時代』を改めて検証してみてはどうか」と提案した。

私が美術を学び始めた1960年代、ピカソはなお圧倒的な存在感を放っていた。当時はまだ、絵画が絵具のマチエールを中心に語られる時代であり、画面に刻まれた物質性そのものが作品の本質を担うものと考えられていた。ピカソの「青の時代」の青は、深いメランコリーをたたえながらも、パリの街に生きる貧しい人々や社会の周縁に置かれた人々を静かに見つめる色である。その悲しみを帯びた青は、同時に清廉な気配を宿し、人間への深い共感と慈しみを逆説的に浮かび上がらせている。

1925年、オルテガ・イ・ガセットは『芸術の非人間化』において、近代芸術が感情表現から離れ、形式や構造、純粋な芸術性へと向かう方向性を鋭く論じた。その後の現代美術は、デュシャン以降のコンセプチュアル・アートが長く主流となり、概念や制度への批評性が重視される一方で、人間的な情感や絵画固有の感性はしばしば脇へ追いやられてきた。

しかし近年の国際美術シーンを眺めると、その潮流には明らかな変化が見られる。先住民文化やネイティブ・アート、さらにはプリミティブな造形への関心が世界的に高まり、長く支配的であった白人中心主義やユーロセントリズムが相対化されつつある。そのことは、絵画が本来備えていた原初的な力や素朴な精神性へ回帰しようとする動きの表れでもあるだろう。

あおいうにの創作の歩みもまた、こうした概念主義と絵画の根源性とのあいだを絶えず往還してきたように思われる。「あおいうに」という画号自体が青い海を想起させるように、氏が青という色彩に特別な関心を寄せ続けてきたことは、その作品群からもうかがえる。であるならば、一度ピカソの「青」と真正面から対峙し、その先へ踏み出すことは、氏の表現をさらに新たな地平へ導く契機となるのではないだろうか。

今回の展示は、あおいうにがピカソの「青」と向き合うだけではなく、それを越えて「青」を自らの色彩として獲得できるかどうか、その試金石となるだろう。
森下泰輔(アートラボ・トーキョー・ディレクター、現代美術家、美術評論家)
 

 

TOP