2019/11/06河野あさみ 「脱あおいうに展〜新章開幕〜」 会期:11月11日(月)〜11月17日(日) 銀座・ミーツギャラリー
河野あさみ「脱あおいうに展〜新章開幕〜」
会期:11月11日(月)〜11月17日(日)
時間:12:00〜19:00(初日17:00から最終日18:00まで)
☆オープニングパーティー:11月11日(月)17時〜
企画:Art Lab TOKYO
会場:銀座・ミーツギャラリー
http://www.meets-gallery.com/index.html
脱あおいうに展~新章開幕~
私は2013年から「あおいうに」と名乗り、2018年まで現代美術(現代絵画)をやってきました。
しかし、それは失望に終わりました。
なぜならそこには、「本当の美」が欠落しているからです。
「絵画の美」とは、様々なビジュアルの構成要素で決まります。
配色や発色、形の捉え方や入り方、空間性や奥行き感、構図やリズムや視線誘導、トーンの幅や明暗構成、絵の具本来の良さや味、キワのコントロールや幅、筆致、量感や絵肌、画面の大きさや画布の選定、地塗り剤や目止め、線の引き方や面の置き方などへの、意志力や拘り…
これらは美しい絵画を作り上げる大前提となるものです。
一方、文脈を作り上げ、コンセプトでガチガチに凝り固めて画面の弱さを補い、数字を競い合うのが現代絵画の本質です。
そのゲームの中には美があるのか?それは新しい美を生み出しうるのか。
私にはそうは思えません。
絵画はどこまでいってもビジュアルの世界であり、内容を求めるべきではありません。
純粋な、画面上の美が濁るからです。
私は、ゲームでは決して生み出せない美を生み出したい。
そうした想いから、「現代アーティスト・あおいうに」を引退することにしました。
私の絵は、現代絵画にも画壇にも属しません。
純粋な美を追求する、ただの画家でありたいのです。
今後はゼロから仕切り直して、本名の「画家・河野あさみ」として活動をしていきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。(河野あさみ)
河野あさみの新しい絵画に向けて
河野あさみがあおいうにを返上して仕切り直したいというのは事実上の純粋画家宣言である。ある意味では現在の世相が向かっている反動の方向と同調しているようにも見える。だが内実はそうではなかろう。河野はただ純粋に好きな絵を描きたいだけなのだ。
では、かつて現代美術家としてあおいうにはどのようなスタンスであったのか? 半裸でライブペインティングを行ったりはしていたが、もっとも顕著なものはメンヘラ展のキュレーションであろう。メンヘラ展とは、メンヘラ(なんらかの精神障害をもつ作家)当事者が現代アートを通じて社会との接点を持ち活動することを目的としたアート展示およびコレクティブで2014年にあおいうにによって発足し、7回の展示と2回のトークショーで成立した。トークのゲストには東京藝大教授の中村政人も入っている。
中ザワヒデキは著書「現代美術史 日本篇」の中で10年代とりわけ3.11以降の新抽象表現主義の文脈としてメンヘラ展および河野あさみ(あおういうに)を取り上げている。
つまり、あおいうに時代の河野は確かに現代美術の文脈で語られてきたが、それはメンヘラ展のイメージが大きいのである。
河野あさみは現代美術の定義をコンセプト重視と語り、たしかにメンヘラ展なるコンセプトを行使してきた。一方純粋絵画を標榜したあとは、審美的に絵画を模索している。しかし、絵画はあおいうに時代より大量に制作しているが、大部分は表現主義的な抽象絵画であり、なかには性的な意匠を構成する具象画や漫画風の形式も混じっているものの、おおむねストロークは現在の河野あさみ絵画と同質である。
絵画におけるストロークや癖、作家の個性は変名したからといって変化するようなものではない。指紋のような同一なものだ。また、あおいうに時代の絵画が概念偏向で審美性に欠けたものかといえば十分に美学的なものでもある。
よって河野あさみのあおいうに返上後の作品がどのような展開になるのかは、作家の宣言文だけでは定かではなく、河野の今後の展開に寄るしかない。そうした意味において今回の「脱あおいうに展~新章開幕~」では河野あさみがどのような展示を見せるのか大いに注目するところだろう。
近作に関して河野は「本当の美の追求」という。一気に描かれるものの、その構成の緊張感、縦横に走る柔らかい筆触、空白の分量と絵具のバランス、また、色彩の調和にいたるまで河野の絵画が一流の感性から生み出されたものであることは間違いがない。
森下泰輔(美術評論家/Art Lab TOKYOディレクター )
1991年茨城県生まれ。「美」をテーマに主に抽象画を描いている。2016年東京藝術大学油画専攻卒業。『現代美術史日本篇』(ART DIVER)にて掲載。ターナーアワード2015未来賞受賞。『ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~』(BSフジ)に出演。2018年初個展「公募落選展」「向こう側に渡ったら」をArt Lab TOKYOで開催。
https://artlab-tokyo.com/artists/detail.html?part=part4&id=20180515184443